きんゆう女子。

取材レポート

【プロに聞く!】新型コロナウイルスの経済・金融市場への影響って?

このコーナーでは、金融業界で働く方々に気になることを質問していきます。

2020.2.25up!

市川さん & きん女。


こんにちは!
編集部のまりこです。


新型コロナウイルスの件で、漠然とこれからどうなるのかな?と感じている方も多いのではないでしょうか?


経済・金融の視点でどう捉えたらいいのか、金融業界で働くプロに聞いてきました!


*教えてくれた人:
市川さん

金融機関お勤め (40代)
紳士的な雰囲気で話しやすい♪
債券に特に強いプロ

趣味は山登り


まずは、冷静になろう


1月に中国湖北省武漢市で最初の新型コロナウイルス感染者の報告があってから、武漢市を閉鎖したり、中国から渡航者を入国制限したり、さらには集会・イベントの中止など、感染拡大防止への動きが進んでいます。


まだまだ2次・3次感染の報告が続いていて先行きが見えない状況です。

まずは国民の健康・安全が気になりますが、経済そして金融市場への影響も心配です。


色々な情報が錯そうしているので、パニック的に早まって間違った判断をしないように整理していきましょう。



Q:中国の経済ってどうなる?


A:心配ですね。武漢市は有数の工業都市で、多くの日本のメーカーも進出しているので影響が出るでしょう。


工場がストップして生産が減るというような直接的な影響だけでなく、企業の混乱や消費者の買い控えなど間接的な経済成長への影響はなかなか試算は難しいですよね。


でも、何かしら目安がほしいところです。


多くのエコノミストは、2003年のSARS時との比較で、経済活動への影響を予想しています。


2〜3月には感染拡大がおさまるのでは?という前提で考えてみると中国の経済成長率は、一時的に1〜2%減少するものの、中長期的に需要自体が減るわけではないと思います。


政府の財政対応などによって年の後半にはV字回復して、年間でならして計算すれば、0.5%程度の成長減に留まるとの予想が大半となっています。


Q:日本とアメリカの経済予測って?


A:日本の年間の成長率は、0.1~0.3%程度の下押し予想との専門家が多いです。

中国からのインバウンド消費の減少や取引先が中国だったりすると生産も減るので一時的に減速するでしょう。


米国経済は、2020年の成長率は0.1〜0.2%程度の下方修正に留められています。

国内消費が経済成長の7~8割を占めていて、海外への依存度が低いためです。


Q:中央銀行の金融政策・財政政策ってどうなる?


A:今後の感染拡大次第ではありますが一時的な成長減速ということであれば、金融政策に動きはないでしょう。



<<覚えておこう!きんゆう単語帳>>

・日本の中央銀行=日本銀行(日本銀行法に基づく財務省所管の認可法人)

・アメリカの中央銀行(制度)=FRB(Federal Reserve Board)連邦準備制度



仮に想定以上に日本経済への影響が大きかった場合でも、日本銀行の取れる政策手段はほぼありません。


長年の超低金利政策で経済を下支えしてきていますが、その効果は限定的でです。


さらなるマイナス金利深堀りは、副作用も懸念されます。


副作用とは、マイナス金利幅が大きくなるとどうなるか考えてみましょう。


銀行の収益が低くなる

財務が悪化する

貸し出しできる力が低くなる


民間企業の成長が滞る


さらに銀行の収益が低くなる・・・


といった悪循環につながります。


緩和政策が経済活動の向かい風となる本末転倒の効果となってしまうんです。

経済対策が必要な場合は、政府による財政出動に頼らざるを得ないでしょう。


Q:投資家たちとお金はどう動いている?


A:安全資産が選ばれる傾向にあります。

リスクオフというのですが、「株価下落・金利低下・円高」となる傾向があります。


騒動が始まってからの金融市場は、株式市場では上企業収益や経済成長の影響は一時的との見方が大きいため、年明けからあまり変わらない横ばいの水準です。


為替市場では、直観に反して円安に転じていますね。


これは、円が売られているより、影響がもっとも軽そうなアメリカへ資金流入しているからです。

つまり、ドルが高い状況となっているんです。


円安になった理由は他にもあって、日本の公的年金の資産構成の変更(米国債の買い増し)があったことも考えられます。


他には、日本企業が米国企業を買収するなどの動きがあったので、ドルを買う需要があるようです。



Q:私たちはどうしたらいい?


A:まだまだ予断を許さない状況でありますが、現時点ではパニック的な金融・経済状況にはなっていません。


それでも、この1か月間ほどの値動きは投資家にとって得られる教訓が多かったと思います。


特に資産を「分散」することの大切さです。


今後どのようなショックが訪れるかは誰にもわかりません。


投資対象の国・地域、業界はもちろんのこと、投資商品(株式、債券、為替、不動産などなど)に幅広く配分することが重要です。


もし、自分の保有商品の全てがこの1か月間で同じ方向に動いていたのであれば、それは十分に分散できていなかったことの証拠です。


1つからでもいいので違った値動きをしていた商品を組み入れ、安定した資産形成の基盤作りにつなげてみてはいかがでしょうか。



まとめ


そこまで日々の経済や金融に左右されるほど資産を動かしているわけではないけれど...

市川さんのお話を聞いてざっくり状況を把握することができました。


ちなみに、今回は過去のSARS時との比較や2-3月には感染拡大がピークアウトする大前提に沿ってお話いただきました。


でも、SARSの時は2003年。


比較すると中国の世界経済に占める割合は約4%から16%程度に4倍になっています。


予想以上の悪影響が出てくる可能性はまだ十分にあるようです。


市川さん、コメントありがとうございました!


サポーター & 編集部市川さん & きん女。

市川達夫さん:早稲田大学大学院を修了後、1999年にモルガン・スタンレー証券に債券ストラテジストとして入社。他外資系証券では、債券投資・ALM戦略分析に加えてコア預金モデルの開発に従事。2009年にモルガン・スタンレー証券に復帰後、債券統括本部長等を務める。2016年より現職ゆうちょ銀行 執行役員部長。市場部門のあらゆる定量分析を担当。首都大学東京にて博士号を取得後、2017年より同大学にて非常勤講師を務める。

きんゆう女子。編集部:世の中にある金融ワカラナイことを金融に精通した人たちに質問していきます。

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